堂本剛主演の「まる」を映画館で観た。
人気現代美術家のアシスタントをしている男が、正体不明のアーティストとして一躍有名になるという話。
その絵が〇(まる)。
自分はいったい何者なのか、なぜ絵を描くのか、そもそもどんな絵を描きたいのか?をテーマにしている。
堂本剛の自然な演技がテーマにマッチしていて良い。
日本美術史の教科書にも登場するが、吉原治良がまさに〇を描いていたことをモチーフにしているのだろう。
吉原治良の代表作「黒地に白」は東京国立近代美術館に収蔵されているが、製作されたのが1965年ということだから60年近く前の作品。吉原治良は具体美術協会を設立し、メンバーの白髪一雄などは部屋にロープをぶら下げて、それに掴まって足で油絵を描くというパフォーマンスで知られた。
堂本剛が〇を描くと斬新に見えるが、現代美術では古典的手法といえる。
絵、とくに無名の現代美術を評価するという点では、なかなか面白く出来上がっている。批判的でないことが好感を持てる。
松本清張は「真贋の森」で美術界のアカデミズムの虚飾を告発し、「天才画の女」では美術商の内幕に切り込んでいる。
この映画は、堂本剛を登用することで、松本清張の厳しさ暗さを排除し、爽やかな作品になっている。