2018年に公開されたドイツ映画。
現代アートの巨匠ゲルハルト・リヒターをモデルとして、ドイツの激動の時代を生きた芸術家の半生を描いた人間ドラマ。
リヒターは1932年に生まれたので92歳で、いまも健全。現在、生きている芸術家のなかでもっとも高額な絵を描くといわれる。
映画の内容は、ナチス政権下のドイツで絵を描くことが好きな少年が数奇な運命を辿り、西ドイツで人気画家になるというストーリー。
映画のなかで、ヨーゼフ・ボイスをモデルにしていると思われる帽子をかぶった美術大学の教授が登場する。その教授の影響を受けて、試行錯誤の末に、写真を大きくカンバスに描き写して画面全体をぼかす手法のフォト・ペインティングにたどり着く。
この映画で印象に残ったシーンがある。
ナチス占領下では抽象画が退廃芸術として評価されていたが、叔母の影響で興味をもつところ、東ドイツから西ドイツに移住して西側の文化のカルチャーショックを受けるところ、美術大学に入って自分自身のアートを探し求めて苦悩するところなどなど。
実際、モデルとなったリヒターも同じような経験をしたのだろう。
2023年に東京国立近代美術館で生誕90年を記念して「ゲルハルト・リヒター展」が開催された。
この展覧会で注目されたのは、日本初公開の大作、《ビルケナウ》(2014 年)。
第二次世界大戦中にユダヤ人強制収容所(ビルケナウ収容所)でひそかに撮られたホロコーストの写真を元に描かれた、幅2メートル×高さ2.6メートルの巨大な抽象画。
それまで現代アートは少し苦手であったけど、映画のおかげでリヒターを知っていたので、この展覧会はなんとなく理解できたような気がした。
話は変わるが、年末にいらなくなった本をブックオフに売った。
買取価格が2,200円にもなったので、以前から気になっていた現代アートの古本をそこで衝動買いした。
「いとをかしき20世紀美術」筧菜奈子著 亜紀書房
便器の「泉」で有名なマルセル・デュシャンからランドアートのロバート・スミッソンまで漫画で分かりやすく説明している。
そのなかで、コンセプチュアル・アートの代表としてヨーゼフ・ボイスにも触れている。
現代アートは難解とのイメージがあるが、順を追ってその発展過程を説明してもらえれば、理解不能なものではない。
便器のアートから始まって、ボイスにリヒター、そしてランドアートに繋がっていく。
なるほど、これがARTというものなんだな。
絵は奥が深くて面白い。