今年のアカデミー賞に作品賞を含む8部門にノミネートされた映画「教皇選挙」を観た。
全カトリック教会の最高司祭であるローマ教皇が死去した後に、枢機卿による投票によって新しい教皇を選出する選挙(コンクラーベ)の舞台裏と内幕に迫ったミステリー作品。

実際に教皇選挙はバチカン宮殿にあるシスティーナ礼拝堂で行われる。
システィーナ礼拝堂は、ミケランジェロ、ボッティチェッリ、ペルジーノ、ピントゥリッキオらのルネサンスを代表する芸術家たちが内装に描いた数々の装飾絵画作品で世界的に有名な礼拝堂である。とくに有名なのが、ミケランジェロがフレスコ画で描いた「最後の審判」。
この映画でも印象的なシーンに登場していた。

驚いたのは、この映画ではシスティーナ礼拝堂をセットとして再現したこと。てっきりバチカンから撮影の許可を得て現地で撮影したのかと思ったが、内容が内容だけにさすがに協力を得られるわけがない。
ローマの老舗映画スタジオでセットを組んで撮影し、その結果、今年のアカデミー賞では脚色賞を受賞している。
ストーリーに合わせた静謐な礼拝堂の映像は、とにかく素晴らしい。
しかもミステリーの要素のストーリー展開も優れている。
テーマがテーマなだけにアカデミー賞の作品賞を受賞することはできなかったが評価は高い。
さて、ミケランジェロ。
ご承知のとおり、レオナルド・ダ・ヴィンチと並ぶルネサンス期の最高の芸術家。
約500年前にシスティーナ礼拝堂の「最後の審判」を発表した時の世の中のインパクトは想像もつかない。名作として500年もの間引き継がれるのだから相当のものであっただろう。現在では全人類の宝といえる。芸術作品としての良し悪しだけではなく、歴史を語る風景として位置付けられている。
この映画「教皇裁判」は、権威に対する人間の欲を描いている。
聖職だって欲がある。人間なんだから当たり前だともいえる。
しかも、全カトリック教会の頂点なのだから争いがあっても不思議はない。その争いがあまりにも俗人的なので、我々から見ても面白い。
だから映画になる。
ということは、ミケランジェロはどうだったのだろうか。
欲を持たずに純粋な気持ちだけで天井画を描いていたのだろうか。
芸術家としての矜持を示して描き切ったと思いたいが、ミケランジェロも人間なのだから欲と争いのなかで歴史に残る絵画を残したのだろう。
その方が良いと思う。