大阪市立美術館の「日本国宝展」、奈良国立博物館の「超国宝展」に続いて、京都国立博物館で開催している、大阪関西万博開催記念特別展の「日本、美のるつぼ」を観に行った。

異文化交流をテーマにして、日本美術の歴史を振りかえるというコンセプト。
展示は「世界に見られた日本美術」から始まる。
千円札のデザインにもなった、世界で最も有名な浮世絵、葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」「山下白雨」が並べられている。最近では複製されたものも含めて、いろいろな所でお目かけする作品ではあるが、この展覧会では見せ方も工夫され、大行列となっていた。
そして、1900年のパリ万博に参加するにあたって、日本が「美術」や「歴史」を持つ「文明国」であることを世界に示すことを目的に、フランス語で編纂された「Histoire de l’ art du Japon 日本美術史」が展示されている。
岡倉天心らによって、弥生時代から説き起こしている日本美術史。この本が我が国における日本美術史の基礎であり、異文化交流のスタートの原点ともいえる。
そして、次に「世界に見せたかった日本美術」へと移る。
俵屋宗達が江戸時代(17世紀)に描いた「風神雷神図屏風」が展示されている。
また、如拙が室町時代(15世紀)に描いた詩画図の「瓢鮎図」。
さらに、酒井抱一が江戸時代(19世紀)に描いた重要文化財の「夏秋草図屏風」もあった。
いずれも初めてみる作品。来てよかった。
尾形光琳は18世紀に俵屋宗達の「風神雷神図屏風」を模写した。その絵の裏に酒井抱一があとから描き加えたのがこの絵画。俵屋宗達、尾形光琳、酒井抱一は全く違う時代を生きたが、現代では琳派として評価されている。
いずれも世界の画家たちに影響を与えることとなる。
この展覧会は、「世界に見られた日本美術」から「世界に見せたかった日本美術」を展示し、「東アジアの日本の美術」「世界と出会う、日本美術」と視野を広げた展示となっている。
展示品は多岐にわたっていて、なかなか見応えがある。
しかし、大阪市立美術館、奈良国立博物館も見応えのある展覧会だったが、人の多さにだけは辟易した。
京都国立美術館をあとにして、すぐ近くの養源院に俵屋宗達の杉戸絵を観に行った。
本堂(客殿)の廊下は天井が「血天井」で有名だが、その廊下の東西の両端の杉戸に、俵屋宗達の着色された白象や唐獅子や麒麟など、図案化した構図は大胆。重要文化財に指定されている。
また、本堂(客殿)の「牡丹の間」には狩野山楽の襖絵もある。
養源院は三十三間堂と道路を挟んで向かい側にある静かなお寺。
観光客の数も少なく、この季節は新緑の木漏れ日が気持ち良い。
異文化交流はとても重要だが、本音をいえばあまりインバウンドの波には呑まれてほしくない。
