東京都美術館で開催している「ノスタルジア-記憶のなかの景色」と「懐かしさの系譜」に行った。
「ノスタルジア-記憶のなかの景色」はギャラリーA・Cで有料(一般500円)、「懐かしさの系譜」はギャラリーBで観覧無料。
隣接した会場で開催され、パンレットは合体したものになっている。
「ノスタルジア-記憶のなかの景色」は「上野アーティストプロジェクト2024」として、公募展覧会で作品発表を続けてきた8名の作家を紹介している。
それぞれが特色を醸し出していて、作家の生い立ちや画家になったきっかけなどをパネルで説明して興味深い。
「懐かしさの系譜」は、東京都が所蔵するコレクションのなかから、懐かしいふるさとなどの情景の絵画や写真などを紹介している。とくに川瀬巴水の版画が見られたのが良かった。
川瀬巴水はちょうど100年前に新版画運動で活躍した絵師。元をただせば浮世絵の歌川派の歌川国芳に行きつく。そのひ孫弟子の鏑木清隆の弟子であり、伝統的な錦絵をベースにして近代的な要素を取り入れた近代浮世絵を描いた。
江戸時代に菱川師宣から始まった浮世絵は、数々の天才絵師を生み出し、大正時代に入って川瀬巴水で到達点を迎えたといえる。
東京都美術館では無料で川瀬巴水の版画を展示している一方で、国立西洋美術館では、2月まで「モネ睡蓮のとき」が開催されている。入場料が一般2,200円と高額ではあるが、連日大盛況となっている。それぞれの美術館が、それぞれの役割を果たしている。我が国のARTはとても健全な姿を現していると思う。
また、東京都美術館の第3展示場では、本日(12月20日)まで東京都立総合芸術高等学校美術科の卒業制作展が開催されていた。
これも観覧無料なので足を運んでみると、高校生の若々しい熱量に圧倒された。こういった若いエネルギーが日本のARTの未来を背負っていくのだろうと感じさせた。
画家は年齢を重ねると、難しいことを難しく表現するように感じる。とくに大学の教員を兼ねている画家にその傾向が強いように感じる。あくまでも私感ではあるが。。。
私も35年間会社勤めをしているが、会社勤めのサラリーマンであれば、まじめに働いていれば、勤続年数を重ねれば社内での地位が嫌でも上がり、それに応じて給料も上がる。
しかし、画家はそうはいかない。
18歳のエネルギーを爆発させている絵画と並べても、ベテランはそれに負けないくらいに見る者の心を掴む絵を描けなければいけない。
つまり、若い才能を圧倒するほどの独自性を持たなければ、厳しい話ではあるが、プロの画家を名乗る資格はない。
巧いだけではダメなのだ。
そう考えるとARTとは実に残酷なものだ。