昨日(12月21日)、東京都美術館に行った帰りに地下鉄「根津」駅まで歩いた。その途中にある東京藝術大学の門の前で「東京藝術大学大学院美術研究科博士審査展2024」の看板が目に入った。
23日まで、東京藝術大学大学美術館にて博士後期課程の最終審査を一般公開しているという。今後、作家・研究者として活躍していくうえでの出発点となる展覧会とのこと。面白そうなので覗いてみた。
国立の芸術大学なのだから、我が国を代表するアーティストを輩出することはもちろんのこと、芸術をアカデミックな側面から研究者として支えていくことも重要な役割なのだろう。
展示はいずれも意欲的であり、さすが我が国最高峰の芸術大学だと思った。
さて、東京藝術大学といえば、芸術を志している若者たちにとっては憧れの存在なのだろう。
この謎を秘めた東京藝術大学について、ノンフィクション小説として作品にしたのが二宮敦人著の「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」(新潮文庫)である。
本人は作家であるが、奥さんが東京藝大の学生というで、話を聞いているうちに興味を持って、誰一人として只者ではない東京藝大生たちの日常について調べ始めたそうだ。
とにかく入学するには熾烈な争いがあり、入学すれば桃源郷であるが、卒業後は半分くらいが行方不明になるという。内容は衝撃的なもので、なかなか読みごたえがある。文庫本の巻末には東京藝大の学長さんと対談までしている。
また、東京藝大出身の作家といえば、一色さゆりの作品も面白い。
とくに2020年に幻冬舎から出版された「ピカソになれない私たち」は東京藝大の学生たちを登場させ、学生たちが自分の才能と向き合う苦悩をリアルに描いている。
推理小説にも近いフィクションの小説であるが、ディテールは東京藝大を卒業しているからこそ描けるのだろう。
この小説もまた面白い。
一方、漫画の世界でも活躍している東京藝大の卒業生がいる。月刊アフタヌーンに連載されている、山口つばさの漫画「ブルーピリオド」は、東京藝大を目指し受験で苦労する姿や合格後も学生として美術を学んでいく姿を描いた青春群像劇。「マンガ大賞2020」を受賞するほど人気があり、映画化もしている。
芸術系大学を目指す若者には必読の書籍となっている。
以上のとおり東京藝術大学は逸材を多数輩出している。二宮敦人の記したとおり、誰一人として只者はいないのであろう。
卒業後はアーティストとして世界で活躍する人、博士課程に進学し研究者として芸術を支えるべく活躍する人、作家として活躍する人、それぞれが自らの才能を発揮させて、社会のなかでの役割を立派に果たしていくのだろう。
そうして、ただただ絵を見て楽しんでいる私のような凡人たちの人生を充実させてくれる。それが天才たちの役割なのだと思う。