「瑞祥のかたち」皇居三の丸尚蔵館

 本日から皇居三の丸尚蔵館で瑞祥のかたち」が開催されている。
 さっそく足を運んでみた。

 皇室の美術品は、昭和天皇が崩御した際に国に寄贈され、その後、宮内庁から国立文化財機構に移管された。そして、新しくできた「皇居三の丸尚蔵館」で一昨年の11月から定期的に模様替えをしながら公開している。展覧会はネットで事前に予約すれば誰でも見られる(一般1,000円)。

 初めて「皇居三の丸尚蔵館」に行ったのは、昨年6月の開館記念展皇室のみやび ―受け継ぐ美―の第4期に狩野永徳の「唐獅子図屏風」が展示されたとき。
 美術出版社の「カラー版 日本美術史」の表紙を飾る国宝。すぐ間近からじっくりと拝見させてもらった。しかも写真撮影可。

 今回は、皇室に伝わるおめでたいことの訪れを告げる「瑞祥」をテーマとして、正月らしくおめでたい造形美を展示している。

 古代中国では不老不死の仙人が住むとされる蓬莱山。日本ではそれを富士山に重ね合わせている。ということで、横山大観の「日出処日本」が展示されている。

 いまから85年前、横山大観が晩年に描いた絵。
 現在では、おめでたい絵を象徴する構図になっている。さすが大観。

 また、瑞祥のうち「鳳凰」に関連して伊藤若冲の「旭日鳳凰図」が展示されている。

 これも間近で見ると実に細かい。
 伊藤若冲は見たものを忠実に写実している印象が強いが、見たことがないはずの鳳凰をまるで実物のように描いている。さすが若冲。

 絵画以外にも鼈甲でできた宝船や伊勢海老などが展示されている。どれも逸品。正月から目の保養となる。

 今回の「瑞祥のかたち」は3月2日まで。
 3月11日からは新しい展示。百花ひらくをテーマとして、皇室が収蔵していた四季折々に咲く花々を題材とした絵画、工芸、書などを公開する。

 皇室が所蔵していた「雅な文化」を気軽に見せてもらえることはありがたい。しかし、雅な文化はあくまでも文化の一面でしかない。

 例えば、我が国と同じように王室を持つイギリスでは、雅な文化も栄えているが、一方でけっして豊かとはいえない労働者階級の街からビートルズバンクシーなどの「庶民の文化」が生まれている。我が国だって、浮世絵はまさに庶民が支持して世界に発展していった。

 今の時代、見る側からしてみれば、「雅の文化」だろうが「庶民の文化」だろうが関係ない。退屈なものは退屈。良いものは良いのだ。
 良いもの見ることによって感性の幅が広がる。
 感性の幅が広がれば、人生はさらに豊かになっていくと思う。 

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